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翼の父登場 ②

Penulis: 紅城真琴
last update Terakhir Diperbarui: 2025-04-25 23:00:46

「すみません、福井翼の・・・友人です」

私は交番に駆け込んだ。

部屋の奥でパイプ椅子に座っている翼。

顔には擦り傷があり、唇の端から血がにじんでいる。

「あの・・喧嘩をしたって、本当ですか?」

どうしても信じられなくて、対応に出た警官に確認してしまった。

「ええ、きっかけは些細なことのようです。すれ違いざまに肩がぶつかったとかぶつからなかったとかの。ただ、3対1の派手な乱闘だったようで、近くの店から通報がありました」

「それは、ご迷惑をおかけしました」

友人として引き取りに来た以上頭を下げるしかない。

「いえ、相手は逃げてしまっていますし、こちらとしても大事にする気はないんですが・・・怪我をしておられるんじゃないかと心配でして」

「はあ」

「ご本人が、『自分は医者だ。怪我はないから大丈夫だ』と救急車の要請を拒否されたものですから・・・」

なるほど。

それで私が呼ばれたのか。

「大丈夫です。彼は救命医ですし、私も医者です。何かあれば責任持って受診させますから」

「そうですか」

訝しげに見ていた警官もホッと表情を緩ませた。

その後、私は身元引受人の手続きをして、翼と二人で警察を後にした。

***

その足で向かったのは、学生時代から通った行きつけのバー。

初めて見る辛そうな翼を一人にすることができなくて連れ出した。

こうして外にいる方が気がまぎれるのではと勝手に思ったのだ。

「どうしたの?らしくないでしょ」

「分ってる」

その言い方が子供みたいで、つい笑ってしまう。

優等生とは言わないけれど、いつもなんでもそつなくこなす翼の弱い部分を初めて見た気がした。

その後二人でかなりのグラスを空けたのだが、今日に限っては不思議なくらい酔えなくて、気がつけば外が明るくなっていた。

「そろそろ、帰ろう」

「そうだな」

2人とも勤務がある以上一旦帰って仮眠くらいは取らないといけないだろう。

***

すでに明るく

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